自分の内側と外側を見つめる本

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book marks MAGAZINEのメインコンテンツ『“あの人”のおすすめ本』第4弾。
第4弾は、国家資格キャリアコンサルタントと、企業で働く従業員を繋げるサービス「Kakedas」を運営する株式会社Kakedasの渋川 駿伍社長におすすめ本をインタビューしました。まずは渋川社長のプロフィールからご紹介します。

氏名 :渋川 駿伍
◯会社名:株式会社Kakedas
◯役職 :代表取締役CEO
◯経歴 :1998年生まれの22歳。高校時代は地元長野県で高校生カフェを創設。

卒業後は1年間のギャップイヤーを取得。日本をヒッチハイクで周り、お金を使わない実験やインターンシップを経て、日本ポップコーン協会設立。同年、MITのMicroMastersプログラムに進学。自身の経験から、Kakedasのサービスに至る。情報経営イノベーション専門大学客員教員TBS『マツコの知らない世界』、News Picks『The Update』他多数出演
◯twitter :@keelerx




国家資格キャリアコンサルタントと、企業の中でキャリア相談したい⼈を繋げるSaaSサービス。従来、様々な課題があった企業内キャリアコンサルティングの仕組みを、プラットフォーム化することで解決するサービス「Kakedas(カケダス)」

◯会社HP  :https://corp.kakedas.ooo/


間違いなく日本でもこの市場が必要になると思って、立ち上げたっていうのがきっかけになります。

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—渋川社長のこれまでの経歴を教えてください。

渋川社長 長野で生まれ、高校生の時に自治体や地元企業と連携して『高校生カフェ』を立ち上げました。これが一番最初にお金を預かり、それを元に新しい価値を生み出すという初めての経験でした。
また僕はずっと進学校に通っていたので、大学進学する前提で受験勉強をしていましたが、学校外での活動を繰り返していくうちに、自分の学びたいことや、やりたいことを大学で突き詰めたり、加速するイメージが持てず、もっと実社会の中で学びたいと感じて、自分の探求テーマを深掘りするために、ギャップイヤーを取ることにしました。
正直ギャップイヤーは、学校の先生から理解を得られることはなかったです。日本では東大やAIU(公立大学法人 国際教養大学)、APU(立命館アジア太平洋大学)など一部の大学で導入はされているものの、ほとんどの大学にはまだない制度です。誰にも理解されなかったし、周りからは反対に遭いながら過ごしていた時期です。そこからCAMPFIRE (キャンプファイヤー)やブロックチェーン関連の会社のインターンをしながら、自分で事業を立ち上げたいという領域を見つけて、起業したのが株式会社Kakedasになります。


—凄まじい経歴ですね。ギャップイヤーはどれくらい取られたんですか?

渋川社長 期間にすると10カ月、ギャップイヤーを取りました。ずっと長野という狭い世界からあまり出たことがなくて、そもそも故郷である日本をもっと知ろうと思い、ヒッチハイクの旅を始めました。
普通のヒッチハイクをしても皆がやっていることと変わりないので、いっそのことお金を使わない実験として、1円も使わずに旅をすることを決めました。(お金がなかったというのもありますが…)
それを決めたのも実はもう一つ理由があり、高校生カフェも1社目に起業した会社も、お金を全然生み出せない状態で事業としては大失敗だったんです。これは「うまくお金について理解できていないんじゃないか。」と感じ、ギャップイヤーを取りお金を使わない実験をすることで、自分なりに何かお金のことを理解するきっかけになるんじゃないかと思い、始めました。


—自身の問題意識がとてつもない行動力を生んだんですね。どんな生活をしていたのか気になります

渋川社長 ヒッチハイクの旅は2ヶ月くらいしていたのですが、自分ではお金を使わずに『誰かに恩を借りること』をずっと繰り返してました。車に乗せてくれた人がご馳走してくれたことや、外国人の方を相手に英語でお城ツアーをして、その代わりにお城の入場料をいただいたりしたこともありました(笑)
僕はポップコーン協会の会長をやっているんですが、実はポップコーン協会もヒッチハイクの旅から生まれていて、和歌山あたりを旅していた頃にたまたま泊まらせていただいた農家さんの家で、帰り際に「お腹空いたら食べなよ」と餞別としてポップコーンの種をもらったんです。
それを次に泊まらせてもらったお家でお礼として作ったのですが、みんなすごく喜んでくれたんです。
ずっとたくさんの人にお世話になってきて感謝と同時に恩を返せない申し訳なさがずっとありました。施しをもらっても、お金で返せるわけじゃないので、どうしたら恩返しできるのかをずっと考えてました。
そんな時にポップコーンと出会って、ポップコーンだったら、みんなに喜んでもらえてたくさんの人を笑顔にできると思ったんです。これが自分なりの恩返しと思い、ポップコーンに関して、のめり込むように調べて、ヒッチハイク旅の最中に立ち上げたのがポップコーン協会です。


—非常に興味深いお話ですね。ポップコーン協会はどんな活動をされているのですか?

渋川社長 協会の活動として、スタディツアーをしています。現在、提携農園が何箇所かあるのですが、そこで収穫体験をしたり、学校教育の一部の時間をいただき、ポップコーンを作る過程でアクティブラーニングを設計したりと、ポップコーンと人や企業、行政等を掛け合わせる活動をしています。メインの活動はケータリング事業になります。LINE社の8000人くるイベントのFamily Dayでも作らせてもらっています。


—多岐に渡って活躍されてますね。それではKakedasの事業内容を教えてください。

渋川社長 一言で言うと『相談のインフラ事業』を作っています。
これは人生の主人公を増やすことをビジョンに、誰かが困ったとき、何かキャリアに悩んだときに、気軽に専門家に話せるようなソフトなインフラを作ろうという想いで、オンラインでキャリア相談ができる転職を前提としないサービスです。
現在、法人向け・一般ユーザー向け、それから大学のキャリアセンターと呼ばれている、大学生が自由に使えるサービスとして展開をしています。


—Kakedasを立ち上げたきっかけを教えてください。

渋川社長 そもそも僕自身が欲しかったサービスでした。理由として、この事業にいたるまで5回ピボットしていて、最初に作った事業から何度も事業転換しているんですね。ピボットするたびに精神的にダメージを受けるんですよ。リーダーとして困っている姿や、弱い一面を見せれないと思っていましたので、誰にも相談できない状態でした。そうやって精神的に追い込まれてる時に、たまたま知り合いがキャリアコンサルタントの資格を取ったので、色々相談したのですが、自分だけで言語化できないことを対話によって解きほぐされていく初めての感覚を得ることができました。それによって一歩踏み出す勇気が湧いてきたんです。
これは対話の持つパワーであり、魅力だなと感じました。その反面、自分自身もそういうサービスを使うことを想像していなかったし、日本だと全然当たり前になっていないんです。
ですが、アメリカでは1兆円くらいの市場規模があって、一人ずつ専属のカウンセラーがいたり、誰かにコーチングを相談してみるとか、そういうチャンスがたくさんあるので当たり前のようにみんなが相談します。先進国では経済発展に伴って、ハードなインフラ(電気やガス、水道など)が整うように次第にソフトなインフラも、準備されていくと思っているんです。間違いなく日本でもこの市場が必要になると思って、立ち上げたっていうのがきっかけになります。

—転職を前提としないサービスとは具体的にどういうことでしょうか?

渋川社長 現状キャリアコンサルタントは、キャリアカウンセラーや転職エージェントの一人として資格を活用している人も多いので、一般的にキャリアについての相談は転職に重きが置かれています。
Kakedasのサービスでは転職斡旋や、企業紹介はしないことを前提としており、対等かつフラットに対話できることを一番に考えています。転職エージェントの方もそういう話はできるのですが、あくまでも転職ありきでの対話になるため、『今の会社よりも転職が良い』という話の流れになってしまいます。そういったものを一切排除し、徹底的に個人の「キャリアサクセス」、その人の人生に向き合う、そういった対話を増やしたいと考えています。現状、1万人を超える大手の連結企業や、今年新設された大学の全生徒にアカウントを発行したりしています。



自分の内面を見つめているときとか、内面を徹底的に掘るときは自省録を読んでいます。

—ありがとうございます。それでは渋川社長の人生に影響を与えた本を教えてください。

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渋川社長 はい。1冊に絞りきれず、2冊用意しました。まず1冊目に紹介したい本が、マルクス・アウレーリウス(著)『自省録』という本です。古代ローマ時代の皇帝の自著で、五賢帝にも選ばれていた皇帝です。マルクス・アウレーリウスの半生を綴った本になります。皇帝がずっと思い悩んでいたことや、社会情勢や普段拝受するいろんな問題に向き合う中で、とにかく自省をしているんです
その中で、自分の言葉を自分に向けて書くんですよ。一人称を「自分」や「私」ではなく、全て「お前」や「君」っていう言葉で訴えかけているんです。現代に例えるとTwitterみたい自分に向けて呟いている本ですね。
中身を見ていくと、時代は違えど、自分の向き合っている課題とか内面をしっかり、探究して掘り続けることがいかに重要かを思い出させてくれる本です。


—古代ローマ皇帝が、私達と同じように思い悩んでいるのは興味深いです。おすすめのポイントはどこですか?

渋川社長 僕は資金調達をしてお金を預かって事業を作っているのですが、自分なりに起業家って呼ばれるのはそんなにしっくりきていないんです。投資家の方々にもお伝えしているのですが、僕は起業家になりたいわけじゃなくて自分なりに一番ワクワクすることをし続けたいという想いがあります。
僕は物事同士の共通項を見つけたり、何か複雑なものをシンプルにするルールとか仕組みを見つけたりするのにすごくワクワクするんです。自分でずっと哲学をしているような感覚なんです。
この作者も本当は哲学者になりたかったのですが家系的に皇帝にならざるを得なかったんです。その運命の中でも、皇帝という立場が哲学者として哲学をしていくための理想的な場所なのではないかと次第に気づいていくんですね。
自分自身もこの本の一説を読んで、現代に生きる自分にとって起業家っていう生き方はある種、隠れ蓑なんです。自分がやっていることは、世の中と対話している、哲学をしているような感覚でいいんだっていう納得感が一節から読み取れました。
投資家や経営者の方など、たくさんの方とお話をしたのですが、起業家は資本主義のど真ん中を突き進む存在なわけですよね。何が求められるかって言うと、選択と集中で、一個の事業に集中するべきだとか、プライベートな時間も全部事業に捧げないといけないとか、それくらいの覚悟を求められるんですよ。
でも僕自身、ポップコーン協会というものをやっています。例えばそれだけを切り取られると「なんでだ?」って思われてしまうんですよ。
その度に自分は『なぜこの生き方をしているのか』っていう答えを見つけるために、世の中をもっと解像度高くして見つめるために言語化する営みが、たまたま会社経営だったりするんですよ。
答えにたどり着くために、今やっていることがが間違っているわけではないと信じているからこそ、信念持って生きていきたいなと思っています。そういったことを改めて教えてくれる本です。


—この本に出会ったからこそ、そういった想いを持つに至ったのでしょうか?

渋川社長 はい、まさにこの本を読んでからこういった想いを持ちました。起業してからずっと、もやもやしている自分がいたんです。今の大学自体もオンラインでずっと通っているので同年代で話せる友達もいなかったんですよ。ずっと一人で悶々としている中で、過去の哲学者である作者とずっとやりとりをしている感覚です。自分の内面を見つめているときとか、内面を徹底的に掘るときは自省録を読んでいます。


—渋川社長の人生に大きく影響を与えた本なんですね。この本に出会ったきっかけを教えてください。

渋川社長 今の会社を起業してから出会いました。元々、小学生くらいの時からずっといじめられていて、学校には行けないけど図書館にずっと通っていました。それから図書館がずっと好きなんです。今でも家を引っ越す時は必ず図書館の近くに引っ越すんですよ(笑)
1ヶ月に1回くらいは土日中、図書館にこもって、一つの領域を決めて勉強をしてます。この本はたまたま自分の居場所である図書館で出会いました。


—運命を感じる出会いですね。この本をどのようなビシネスパーソンに勧めたいですか?

渋川社長 まず間違いなくリーダーの方や自分で意思決定をしないといけない人は、必ず引っかかる部分があると思います。こんな昔の皇帝が今の自分たちと同じことを悩んでるんだ、と共感を覚えると思います。これは僕の感覚ですけど、スルメイカみたいに味わい深い本です。何度読み直してもひっかかる箇所が変わってきて、読むごとに新しい気付きが増えていくんです。自分自身の経験によってどんどん得られるものが変わっていく本ですね。


僕自身の思考のフレームワークになった本です。

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—ありがとうございます。それでは2冊目の紹介をお願いします。

渋川社長 はい。2冊目は自分の外側の事象、社会とか地球とか宇宙とかの話を、自省録の対比で用意しました。バックミンスター・フラー(著)『宇宙船地球号操縦マニュアル』という本です。
作者は現代のレオナルドダヴィンチと呼ばれている方です。作者自身が、建築家であり科学者であり、また思想を体系化している哲学者でもあり、教師でもある。すごく多才な人なんです。僕はまずそういう人に憧れています。
本書は簡単に説明すると、この地球を宇宙船に喩えています。そうすると今の化石燃料とかは、地球っていう宇宙船の資源・エネルギーであり、人類は乗組員である、という思考実験から始まります。
現在の環境問題とか、色々なトピックを考える上で、キーになっている本だと思います。
面白いのは、地球には富があると書かれており、富はノウハウと呼ばれているような、みんなが築いてきたような知識と、実際に使えるエネルギー(資源)。この両方を富と説明しています。つまるところ資源はどこかで尽きますが、ノウハウや知識自体は永遠に上昇されていって、限界に達した時に地球はどうなるのか?ということが書かれている本です。僕自身の思考のフレームワークになった本です。


—本書に出会ったきっかけと、自身で活かしているポイントを教えてください。

渋川社長 2年前に人工知能を研究している科学者の方からオススメしてもらいました。その方の執筆とかを手伝っていた時期に、紹介された本です。それこそ環境問題とか地球のトラブルや問題ごとを自分なりに解釈するときに、作者の思想を拠り所にしています。コスモポリタニズムという地球市民であるという思想を自分自身のアイデンティティとしたところから出発する思想体系で、簡単に言うと人類皆兄弟みたいな感じな思想です。


—ありがとうございます。本書はどのようなビジネスパーソンに勧めたいですか?

渋川社長 最近、孫泰蔵さんとお話する機会があったんですけど、孫泰蔵さんは東大を出て経済学の勉強をしていた方なんですが、経済を紐解いていくと、結局この本に繋がるという話をしていました。
孫泰蔵さんは、今この本を超える自分なりの新たな思想を作ろうとしているそうです。
この本は社会課題に関心のある方とか、今生きてる自分の世代で何か、使命感を感じてる人にとっては、価値観を大きく変えるきっかけになると思います。


最後に

第4弾は、株式会社Kakedas 代表取締役CEOの渋川駿伍社長にお話を伺いました。
渋川社長自身のたくさんの経験から創られた「Kakedas」は日本社会において必ず必要になってくると私自身感じました。また渋川社長は自身の内面を深い部分まで見つめており、自分の目を持って世の中を見つめている方で、その姿勢に大変心を打たれました。今回紹介いただいた2冊は意思決定者(リーダー)の方や、社会問題に関心のある方には非常に興味深い内容の書籍でした。興味のある方は是非手にとってみてはいかがでしょうか。


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渋川駿伍社長とbookmarks運営にて